大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌地方裁判所 昭和47年(行ウ)6号 判決

原告 佐藤茂夫 外三八名

被告 北海道開発局長 北海道開発局網走開発建設部長

訴訟代理人 中村勲 有倉照雄 外八名

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

〔請求の趣旨〕

一  被告北海道開発局長が昭和四六年九月二三日付で原告ら(但し、原告梶田好彰を除く)に対してした別表処分の種類および程度欄(以下、処分欄という)記載の各懲戒処分はいずれもこれを取消す。

二  被告北海道開発局網走開発建設部長が昭和四六年九月二三日付で原告梶田好彰に対してした別表処分欄記載の懲戒処分はこれを取消す。

三  訴訟費用は被告らの負担とする。

〔請求の趣旨に対する答弁〕(被告両名)

主文と同旨

第二当事者の主張

〔請求原因〕

一  原告らは、いずれも別表所属部局欄記載の場所において勤務する北海道開発局職員(国家公務員)である。

二  原告らは、人事院勧告の完全実施及び適正な勧告をなすべきことを要求して昭和四六年七月一五日午前八時三〇分から二九分間以内の職場集会を企画、実施し、参加したところ、被告北海道開発局長は原告ら(但し、原告梶田好彰を除く)に対し、被告北海道開発局網走開発建設部長は原告梶田好彰に対し、それぞれ昭和四六年九月二三日付をもつて、国家公務員法(以下、国公法という)九八条二項等に基づき、別表処分欄記載のとおりの各懲戒処分をした。

処分理由は次のとおりである。

1 原告佐藤茂夫は、全北海道開発局労働組合(以下、「全開発」という)中央執行委員長として、当局の警告を無視して、昭和四六年七月一五日勤務時間内職場集会(以下、「本件集会」ということがある)を指導し、多数の職員をこれに参加させた。また、同日北海道開発局において行われた本件集会の実行に関与した。

2 原告相原敬用は、全開発書記長として、当初の警告を無視して、前同日本件集会を指導し、多数の職員をこれに参加させた。また、同日北海道開発局において行われた本件集会を指導した。

3 原告直田政二は、全開発副中央執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日本件集会を指導し、多数の職員をこれに参加させた。また、同日札幌開発建設部において行われた本件集会の実行に関与した。

4 原告二川原一夫は、全開発会計長として、当局の警告を無視して、前同日本件集会を指導し、多数の職員をこれに参加させた。また、同日建設機械工作所において行われた本件集会の実行に関与した。

2 原告綿谷勝治は、全開発中央執行委員として、当局の警告を無視して、前同日本件集会を指導し、多数の職員をこれに参加させた。また、同日北海道開発局において行われた本件集会の実行に関与した。

6 原告渡辺孝士は、全開発中央執行委員として、当局の警告を無視して、前同日本件集会を指導し、多数の職員をこれに参加させた。また、同日土木試験所において行われた本件集会の実行に関与した。

7 原告高橋幸夫は、全開発本局支部書記長として、当局の警告を無視して、前同日北海道開発局において行われた本件集会を指導した。

8 原告柴田利作は、全開発函館支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日函館開発建設部において行われた本件集会を指導した。

9 原告岩谷正信は、全開発函館支部書記長として、当局の警告を無視して、前同日函館開発建設部において行われた本件集会を指導した。

10 原告奈良俊夫は、全開発函館支部副支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日函館開発建設部において行われた本件集会の実行に関与した。

11 原告藤原伸之は、全開発室蘭支部書記長として、当局の警告を無視して、前同日室蘭開発建設部において行われた本件集会を指導した。

12 原告上野吉之は、全開発室蘭支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日室蘭開発建設部において行われた本件集会を指導した。

13 原告朝倉定安は、全開発旭川支部書記長として、当局の警告を無視して、前同日旭川開発建設部において行われた本件集会を指導した。

14 原告加藤亀義は、全開発旭川支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日旭川開発建設部において行われた本件集会を指導した。

15 原告小田原英晴は、全開発留朋支部書記長として、当局の警告を無視して、前同日留朋開発建設部において行われた本件集会を指導した。

16 原告西村一昭は、全開発留朋支部副支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日留朋開発建設部天塩川幌延治水事業所において行われた本件集会を指導した。

17 原告官下義雄は、全開発留朋支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日留朋開発建設部において行われた本件集会を指導した。

18 原告柏木正博は、全開発稚内支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日稚内開発建設部において行われた本件集会を指導した。

19 原告村元勝利は、全開発稚内支部書記長として、当局の警告を無視して、前同日稚内開発建設部において行われた本件集会を指導した。

20 原告金沢実は、全開発稚内支部副支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日稚内開発建設部浜頓別出張所において行われた本件集会を指導した。

21 原告加藤昌明は、全開発帯広支部書記長として、当局の警告を無視して、前同日帯広開発建設部において行われた本件集会を指導した。

22 原告関塚良雄は、全開発釧路支部書記長として、当局の警告を無視して、前同日釧路開発建設部において行われた本件集会を指導した。

23 原告金野雄二郎は、全開発釧路支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日釧路開発建設部において行われた本件集会を指導した。

24 原告豊田脩は、全開発石狩川支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日石狩川開発建設部において行われた本件集会を指導した。

25 原告西田亥三男は、全開発石狩川支部書記長として、当局の警告を無視して、前同日石狩川開発建設部において行われた本件集会を指導した。

26 原告菊地広海は、全開発網走支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日網走開発建設部において行われた本件集会を指導した。

27 原告日向寺正夫は、全開発網走支部副支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日網走開発建設部において行われた本件集会の実行に関与した。

28 原告吉田勇治は、全開発帯広支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日帯広開発建設部において行われた本件集会を指導した。

29 原告湊昇は、全開発帯広支部副支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日帯広開発建設部において行われた本件集会を指導した。

30 原告葛巻祥一は、全開発土試支部書記長として、当局の警告を無視して、前同日土木試験所において行われた本件集会を指導した。

31 原告野地正保は、全開発土試支部執行委員長として、当局の警告に無視して、前同日土木試験所において行われた本件集会を指導した。

32 原告松田和雄は、全開発土試支部副支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日土木試験所において行われた本件集会を指導した。

33 原告浅見和寿は、全開発建機支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日建設機械工作所において行われた本件集会を指導した。

34 原告村元真治は、全開発建機支部書記長として、当局の警告を無視して、前同日建設機械工作所江別工場において行われた本件集会を指導した。

35 原告乗松賢治は、全開発建機支部副支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日建設機械工作所において行われた本件集会を指導した。

36 原告渡部政司は、全開発札建支部執行委員長として、当局の警告を無視して、前同日札幌開発建設部において行われた本件集会を指導した。

37 原告浅野昇造は、全開発札建支部書記長として、当局の警告を無視して、前同日札幌開発建設部において行われた本件集会を指導した。

38 原告二本柳幹雄は、全開発特別中央執行委員として、当局の警告を無視して、前同日札幌開発建設部において行われた本件集会の実行に関与した。

39 原告梶田好彰は、全開発網走支部書記長として、当局の警告を無視して、前同日網走開発建設部において行われた本件集会を指導した。

三  原告二川原一夫は昭和四六年一一月一〇日、同金野雄二郎は同月二〇日、その他の原告らは同月一七日、本件懲戒処分に対して国公法九〇条、人事院規則一三―一に基づき人事院に審査請求の申立をし、同日受理され、その後三か月が経過した。

四  被告ら主張の処分事由の存在と法令の適用に対する認否

1 1項前文中、職場集会が勤務時間内であることは否認し、その余は認める。

(一) 1項(一)の内、第四三回中央委員会の方針の要約中の「勤務時間内に食い込む」職場大会の部分は否認し、その余は認める。

(二) 1項(二)の内、「勤務時間内」の部分を否認し、その余は認める。

(三) 1項(三)は認める。

(四) 1項(四)の内、「全開発の七一年賃金要求に対しては、被告北海道開発局長においては当該要求にかかる交渉にも応じてその要望を聞き、」及び「また、同庁においては全開発から要望を直接聞き、」の部分は認め、その余は知らない。

(五) 1項(五)の内、全開発が昭和四六年七月一五日北海道開発局本局をはじめ、管下の一三地方部局中一二の地方部局において、二九分間の職場集会を行つたことは認め、その余は不知又は否認する。

2(一)(1) 2項(一)(1)の前文は認める。

(2) 2項(一)(1)イの内、昭和四六年五月三〇日に第四三回中央委員会が開催されたこと、同委員会に括孤書内の賃金闘争方針が提案されたこと、右方針が原案どおり可決されたことは認めるが、右中央委員会を2項(一)(1)前文に記載された原告らが開催し、同委員会に賃金闘争方針を提案した事実は否認する。

(3) 同ロの内、同項記載の機関紙が発行され各支部を通じて職員に配布されたことは認めるが、その余は否認する。

(4) 同ハの内、昭和四六年七月六日拡大戦術委員会が開催され、同項記載の分析が行なわれ七月一五日の争議行為の内容が確認され、同年七月七日ごろこれが各支部に指令されたことは認めるが、その余は否認する。

(5) 同ニの内、昭和四六年七月一三日から一五日にかけて、同項記載のビラが各支部を通じて職員に配布されたことは認めるが、その余は否認する。

(6) 2項(一)(2)前文の内、昭和四六年七月一五日別表中「原告が当日自ら指導、関与した集会の実施状況」欄中、同欄記載の職場集会が行われた事実は認めるが、その余は不知又は否認する。

(7) 2項(一)(2)イ・ハ・ニ・ホ・ヘの事実はすべて否認する。

(8) 同ロの事実は認める。

(9) 2項(一)(3)の内、昭和四六年七月一五日大略被告主張の人数に及ぶ多数の職員の参加する職場集会が行なわれた事実は認めるが、その余は否認する。

(二)(1) 2項(二)(1)前文の内、同所記載の原告が、同所記載のとおりの支部役員の地位にあつたこと、昭和四六年六月二二日ごろ、それぞれの支部において同所記載の内容の批准投票が行われたこと、同所記載の全開発本部の指令が、分会執行委員長会議等を通じて傘下各分会に伝達されたこと、昭和四六年七月七日ごろから一五日にかけて、それぞれの支部において同所記載の支部機関紙等が発行され、分会等を通じて職員に配布されたこと、昭和四六年七月一五日、別表中「原告が当日自ら指導、関与した集会の実施状況」欄に記載の職場集会が行われたことは認める。その余は不知又は否認する。

(2) 2項(二)(1)イ以下の事実中、イ・ロ・ハ・ニ・ヘ・ト・リ・ヌ・ル・ヲ・ワ・カ・ヨ・タ・レ・ソ・ツ・ナ・ラ・ム・ウ・ヰ・ノ・オ・ク・ヤ・マ・ケ・フの各事実は認める。ホの事実中、決議文の採択をしたことを否認し、その余の事実を認める。チの事実中、激励電文の読みあげをしたことを否認し、その余の事実を認める。ネの事実中、決議文の提案をしたことを否認し、その余の事実を認める。

(3) 2項(二)(2)の内、別表中「当該部局における集会の実施状況」欄記載の内容は知らない。

(三) 2項(三)の内、原告二本柳幹雄が同所記載の本部役員の地位にあつたこと、同所記載の集会が行われたことは認めるが、その余は否認する。

3 3項の主張は争う。

4 全開発は、昭和四六年七月一五日午前八時三〇分から二九分間以内の本件集会を実施したが、北海道開発局においては勤務開始時間は午前八時三〇分からであるところ、ごく一部の現場を除き、従来より午前九時までに出勤した職員については遅刻扱いしないという慣行が確立していた。よつて、本件集会は勤務時間内に行われたものではない。被告らは、午前八時半から同九時までは出勤簿整理時間であると主張するが、交通至便の都市部を含め、北海道内一律に午前九時まで出勤とされている現実に鑑みるならば、出勤簿整理時間なるものは、全く形式にしかすぎず、実質は、午前九時が始業時となつていることは明白であり、このことは、大半の官公庁で実施されている公知の事実である。

五  (本件懲戒処分の違法事由)

1 国公法九八条二項は憲法二八条に違反する。

公務員の職務の性質、内容はきわめて多種多様であり、公共性のきわめて強いものから、私企業のそれとほとんど変わるところのないものまである。従つてそのような公務員の職務の多様性と公共性の強弱とを顧慮することなく、その公共性を理由に、全ての国家公務員の一切の争議行為を一律に禁止している国公法九八条二項は、公務員の労働基本権を保障した憲法二八条の趣旨に反し、必要やむをえない限度をこえて争議行為を禁止したものとして、違憲の規定といわざるをえない。右事情を顧慮し特定の職務に従事する公務員の労働基本権を制限する場合が仮にあるとしても、それは合理性の認められる必要最小限度のものにとどめなければならないことはいうまでもない。従つて、争議行為を制限する場合にも、一律に全面的に禁止するものであつてはならず、部分的あるいは調整的な規制にとどめられるべきものである。ところが国公法九八条二項はこの点について全く考慮することなく争議行為を全面的に禁止しているのであるから、憲法違反といわなければならない。

2(一) 仮に、国公法九八条二項が合憲だとしても、労働基本権の制限は、労働基本権の行使によつて守られる権利と、それによつて生ずる国民生活全体の利益(公共性)への侵害とを各種公務の多様性を考慮しつつ、個別的具体的に比較衡量して決定すべきであり、争議行為を禁止するのは、争議行為によつて国民生活全体の利益を直接害し、国民生活に重大な支障をもたらすおそれのある場合に限られるべきであり(最高裁大法廷昭和四一年一〇月二六日判決刑集二〇巻八号九〇一頁、同昭和四四年四月二日刑集二三巻五号三〇五頁)、右場合を更に具体的に言えば、制限・禁止することができる争議行為は、その事業もしくは職務の性質・内容から見れば、職務の一時停廃によつて、一般的かつ直接的に国民の生存の根底というべき生命・身体の安全、健康に有害な危険を惹起する蓋然性を有する部門に属し、個別的、具体的規制をもつてしては、右の危険を回避することが著しく困難な事業もしくは職務に限られるというべきであり、そのように解しなければ違憲である。

(二) そこで北海道開発局の業務の公共性について検討する。

(1) 北海道開発局が所掌している業務は、道路・河川・港湾・農地に関する公共事業であり、北海道における社会資本の充実と資源開発にその基本目的をおいている。右事業を大別すると、「建設」と「維持管理」に分けられる。「建設」では国民は道路や港湾の完成、河川改修、ダムの造成、農地開発などにより交通運輸、物資流通、資源開発、災害予防などの面において、直接あるいは間接に利益を享受する。また、「維持管理」の面では交通の面における行政サービス、災害予防などの面においてこれまた直接あるいは間接に利益を受ける。まず「建設」の面から考えるならば、これは将来にむかつての事業であり、道路、港湾、ダム、農地開発等ほとんどの事業が計画から完成まで数年かかるのが普通である。そうして完成してはじめて国民は利益を受けるのであるが、その利益の受け方も社会資本の充実のうえに立つて、企業等が生産活動をたかめ、まわりめぐつて利益を受けるという間接的利益享受がほとんどである。従つて、数日間その業務が争議行為によりストツプしたとしても国民生活全体の利益を直接に害し、国民生活に重大な支障をもたらすものでは全くない。次に「維持管理」の面では、豪雨豪雪、洪水などによる突発的な事故の場合を除いては、短期間の争議行為により国民生活全体の利益を直接に害するものではない。

(2) 北海道開発局において実施している事業を施行方法の面から分けると「請負工事」と「直営工事」とがあり、「請負工事」は年々増加し、主要業務の八〇ないし九〇%は民間に請負わせる「請負工事」で占められ(道路の建設、改良、補修、河川改修、同維持補修、港湾の建設、空港の建設、農用地開発、土地改良事業等)、民間企業が請負つても採算のとれない業務分野について、わずかに直営が行われているにすぎない(道路清掃、道路の部分的補修、街路樹のせん定等)。請負工事の場合に、北海道開発局の職員が行うべき業務を大別すると、「工事の調査、設計」「工事の発注」「工事の監督」「工事の検定」である。さて、請負工事の場合、国民が期待している公共物の建設の直接の担い手は請負業者である。従つて、請負工事が発注されている限りにおいて、北海道開発局の職員が争議行為を行つても、工事が停止することはありえない。つまり請負工事においては、開発局の労使紛争の如何にかかわらず、工事契約にもとづいて工事が進捗するのであつて、国民生活にとつて影響がおよぶ余地はないのである。もつとも「工事の調査、設計」過程でストライキが実施され「工事の発注」が遅れることはありうるが、これにより国民生活に影響が出るのは極めて長期間ストライキが行われた場合に限られる。次に問題となるのは「工事の監督」「工事の検定」業務であるが、これは請負工事に不正疎漏がないよう行う業務である。これらの業務は、四六時中監督員らが立ち合つて行うものではないし、争議行為により数日停止したとしても後に回復しえないものではない。以上のとおり北海道開発局の業務の八〇ないし九〇%を占める請負工事については北海道開発局の職員が数日間争議行為をしても、国民生活に影響を与えることは考えられない。次に直営工事の場合であるが、直営工事の場合は請負工事と異なり工事の直接の相手が北海道開発局の職員であるということから、争議行為をおこなつた場合、工事そのものが停滞するという問題がおきてくる。そこで以下それぞれの事業の内容を個々的に検討する。

(A) 道路維持事業について

道路維持事業は、国道あるいは指定地方道において、すでに完成、改良された道路の維持補修ならびに道路用地管理の業務からなりたつている。道路の維持補修とは、要するに道路の状態を良好に保ち交通に支障のないようにすることであるが、道路というのは集中豪雨や地震などの場合を除いては長い時間をかけて徐々に悪化するのであつて、道路の維持補修もそれらの状況を勘案しながらもつとも悪化の激しいものから順次補修するという対応でおこなわれるものである。従つて、終日ストライキをおこなつたとしても、ストライキ終了後通常の業務に就労しさえすれば、国民生活にはさしたる影響を及ぼさないですむ種類の業務である。次に道路用地管理の業務であるが、これはいわゆる道路占有に関する業務であり、北海道開発局にとつて唯一の窓口業務である。この業務は格別処理件数が多いわけではなく、また即日即決といつたものでもないので、争議行為により業務が数日停廃しても国民生活にさしたる影響を及ぼすものではない。

(B) 河川維持事業

この事業は基本的には(A)の道路維持事業と同様に考えることができ、要するに洪水時以外は緊急的性格を帯びていない業務であつて、短期日の争議行為によつて国民生活に支障が生ずるとは考えられない。

(C) 緊急的業務

直営事業のなかには、前記のように災害時における道路、河川の維持修理という緊急的業務がある。

これらの業務が争議行為によりストツプした場合、国民生活に重大な影響を与える場合がありうることはたしかである。しかし、こうした事態はめつたにあることではないし、災害復旧に従事する北海道開発局職員の数は全体からみれば少数であり、保安要員の確保さえしてあれば争議行為をしても国民全体の利益をそこなうことはなく、実際にも全開発労働組合が争議行為を行う場合には、あらかじめ当局に対して災害時にただちに出勤する旨を通知し、あるいは災害発生危険箇所には監視員など、いわゆる保安要員を配置して、国民生活に支障のないよう配慮しているのであつて、争議行為により緊急的業務が停廃し、国民生活に影響が出ることはありえないし、実際にもなかつたのである。

(D) なお、冬期間における道路除雪作業は、道路維持事業の一型態であり、北海道の気象条件からして夏期間における道路維持事業からみると、国民生活との係わり合いは深いと言えるが、それとても豪雪あるいはそれに準ずる降雪時でなければ、緊急性をもつているわけではなく、降雪期間中だからといつて争議行為によつてただちに国民生活に重大な影響を及ぼすとは一概に言えないのである。

(三) そこで本件集会について考えると、北海道開発局の事業及びこれに従事する原告らの職務内容はその性質上前記のように争議行為の制限を必要とするとは言えず、また、本件集会は、慣行上の始業時刻たる午前九時(但し、ごく一部の現場を除く)まで乃至始業時わずか二九分間以内の、しかも冬季と異なり除雪等の作業を必要としない夏季の職場集会であり、なんら業務上の支障も起きず、国民生活上のなんらの障害も不利益も発生せず、まして国民生活全体の利益を強度に侵害したともいえないから、そもそも国公法九八条二項の禁止する「争議行為」に該当しない。

3 仮りに本件集会が国公法九八条二項により禁止されたものであるとしても、争議行為という団体的性格の行為に対し、個別的労働関係における服務規律違反に対する制裁ともいうべき懲戒処分を課することはできないのである。また公共企業体等労働関係法(以下公労法という)一八条と国公法九八条三項との対比からいつても、同条項は争議行為禁止違反の効果として公労法一八条同様に解雇を予定しているだけであつて、懲戒処分を予定しているものとは解されない。従つて、原告らの行為に対し懲戒処分をもつてのぞむことは違法である。

4 本件懲戒処分は懲戒権の範囲を逸脱し、あるいは懲戒権を濫用したものである。即ち本件集会については、前記の如く平常は午前九時始業の慣行があり、その下で午前八時三〇分から五九分までの二九分間以内で行われたものであり、その態様も平穏な職場集会であり、国民生活に何らの不利益も障害ももたらされなかつたのであるから、本件懲戒処分は懲戒権の範囲を著しく逸脱し、あるいはこれを濫用したものといわなければならない。

六  よつて、原告らは被告らに対し、本件懲戒処分の取消を求める。

〔請求原因に対する認否及び被告らの主張〕

一  請求原因一の事実は認める。同二のうち、人事院勧告の完全実施及び適正な勧告をなすべきことを要求しては否認し、その余は認める。同三の事実は認める。

二  (処分事由の存在と法令の適用)

1 本件集会に至る経緯

原告ら、北海道開発局職員(国家公務員)が昭和四六年七月一五日に行つた勤務時間内における職場集会は、いわゆる総評・公務員共闘の七一年賃金闘争における統一行動として実施されたものであつて、その経緯は、次のとおりである。

(一) 公務員共闘は、昭和四六年三月一二日、七一年賃金闘争の方針として、「七月中旬に全職場一時間のストライキを構えて闘う」旨の戦術を設定したが、原告らが組織する職員団体である全開発もまた、この方針に呼応して、同年五月三〇日、第四三回中央委員会を開催し、「公務員共闘の設定する七月中旬の統一行動日に、実力行使として早朝一時間、勤務時間内に食い込む職場大会を、組合員の批准投票による六〇パーセント以上の賛成を条件に行う。その細部については、拡大戦術委員会の検討を経て、中央執行委員長が指令する。」旨の方針を決定した。

(二) その後、公務員共闘は、同年六月一一日、統一行動日を七月一五日とすることを決定した。そこで全開発は、前記第四三回中央委員会において決定したところに従い、同年六月二二日ごろ、「時間内一時間の実力行使を実施すること」について組合員による批准投票を行い、さらに、同年七月六日、拡大戦術委員会を開催して、統一行動日における争議行為の具体的内容について検討した。その結果、統一行動日には「早朝勤務時間内二九分の職場大会を行うこと」を確認し、同年七月七日ごろ、この旨を全開発の各支部に指令し、各支部はまた、これを各支部の機関を通じて組合員に指示した。

(三) 前記のような、原告らが組織する全開発の動向に対し、被告北海道開発局長は、総理府総務長官談話、内閣官房長官談話及び北海道開発庁長官談話を掲示して全開発及び職員に、違法行為に対する警告を行つたほか、全開発に対しては、全開発中央執行委員長にあて被告北海道開発局長名の警告文書を交付するなどして、違法行為の計画の中止と、万一違法行為が実施された場合には厳しい態度で臨まざるを得ない旨を通告し、職員団体としての良識ある行動をとることを促し、また、職員に対しては、同被告名による警告文を掲示し、さらに各職員にあて同被告名の警告文書を交付するなどして、違法な行動に参加することのないよう国家公務員としての自重を促し、万一違法な行動に参加した場合には厳しい態度で臨まざるを得ない旨を周知した。

(四) なお、全開発の七一年賃金要求に対しては、被告北海道開発局長においては当該要求にかかる交渉にも応じてその要望を聞き、これを上級官庁である北海道開発庁に伝え、また、同庁においては全開発から要望を直接聞き、その趣旨を関係機関に伝えるなど、北海道開発庁および同被告において、それぞれなし得る限りの努力を払つていたものである。

(五) しかしながら、全開発は、前記被告らの事前の警告および努力にもかかわらず、昭和四六年七月一五日、本件集会を実施し、かつ、当日の解散通告、就業命令を無視して、これを敢行したものである。

その結果、同日、北海道開発局本局をはじめ、管下の一三地方部局中一二の地方部局及び二三九の出先機関中一八二の出先機関において、始業時から二九分間以内の勤務時間内における職場集会が一斉に実施され、これに管理職員等を除く当日の在庁職員約八、五〇〇名中のおよそ七八パーセントに及ぶ約六、六〇〇名の職員が参加してその職務を放棄するに至つたものである。

2 本件集会に関する原告らの行為

(一)(1) 原告佐藤茂夫、同相原敬用、同直田政二、同二川原一夫、同綿谷勝治及び同渡辺孝士は、別表中「当時の組合役員」欄に記載のとおり本部役員の地位にあつたところ、次に掲げる行為を行つた。

イ 昭和四六年五月三〇日、第四三回中央委員会を開催し、同委員会に、「政府に対して公務員労働者に対する賃上げの具体的回答を求めるため、七月中旬に行われる公務員共闘統一行動に参加する。実力行使の具体的な内容は、早朝一時間、時間内に食い込む職場大会とする。実力行使に先立ち批准投票を実施する。批准は、組合員の六〇パーセント以上の賛成を必要とする。実力行使の細部については、拡大戦術委員会の検討を経て、中央執行委員長が指令するものとする。」旨の賃金闘争方針を提案した。その結果、右方針は原案どおり可決された。

ロ 昭和四六年六月一〇日、「大幅賃上げをめざし、一票投票に結集を」との見出しで「さあ!職場でみんながたたかう賃金闘争にするために、ともにガンバろう」旨の記事を登載した機関紙を発行し、各支部を通じて職員に配付することにより、職員に批准投票を行うよう働きかけた。

ハ 昭和四六年七月六日、第四三回中央委員会において決定した賃金闘争方針に基づいて、拡大戦術委員会を開催し、中央の賃闘情勢、批准投票の結果に対する分析を行うとともに、七月一五日の争議行為の内容を「早朝時間内二九分の職場大会」とすることを確認し、同年七月七日ごろこの旨を各支部に指令した。

ニ 昭和四六年七月一三日から一五日にかけて、「政府は交渉拒否、賃上げを抑える政府、人事院、七月一五日のストで要求を前進させよう」、「組合員の皆さん、七・一五の実力行使にはみんな揃つて参加しましよう!」と登載したビラを、各支部を通じて職員に配付することにより、職員に七月一五日の争議行為に参加するよう働きかけた。

(2) 右各原告は、さらに、昭和四六年七月一五日当日、別表中「原告が当日自ら指導、関与した集会の実施状況」欄に記載のとおり支部における各勤務時間内職場集会を当該支部の役員らをして実施させ、かつ、当該集会に関し、次に掲げる行為を行つた。

イ 原告佐藤茂夫は、全開発本局支部の当該集会を実施させるため職員が集会に参加するようあるいは集会に参加した職員が集会から離脱しないよう、また集会に対する当局側の措置を見張るための監視を庁舎内で行つた。

ロ 原告相原敬用は、全開発本局支部の当該集会において、集会に参加した職員を激励する挨拶を行つた。

ハ 原告直田政二は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会を実施させるため、庁舎玄関前附近で、職員に対し集会へ参加するよう呼びかけを行い、また、当該集会を実施させるための前同様の監視を行つた。

ニ 原告二川原一夫は、全開発建機支部の当該集会を実施させるための前同様の監視を庁舎玄関附近及び集会場で行つた。

ホ 原告綿谷勝治は、全開発本局支部の当該集会を実施させるための前同様の監視を庁舎内で行つた。

ヘ 原告渡辺孝士は、全開発土試支部の当該集会を実施させるための前同様の監視を第一庁舎裏口玄関附近及び集会場で行つた。

(3) よつて、右各原告は、昭和四六年七月一五日、前記1(五)に記載のごとく六、六〇〇名に及ぶ多数の職員を本件勤務時間内職場集会に参加させるに至らしめたものである。

(二)(1) 別表中「原告の氏名」欄に記載する各原告のうち、(一)に掲げた各原告及び二本柳幹雄を除く高橋幸夫ほか三〇名の各原告は、別表中「当時の組合役員」欄に記載のとおり支部役員の地位にあつたところ、昭和四六年六月二二日ごろ、それぞれの支部において、「闘争の山場では、時間内一時間の実力行使を実施すること」について職員の賛否を問う争議行為のための批准投票を行い、また、昭和四六年七月七日以降、それぞれの支部において、前記全開発拡大戦術委員会の確認を経て発せられた全開発本部の指令を分会執行委員長会議、分会長会議、分会長・班長会議、分会代表者会議、支部拡大戦術会議、分会代表者班長会議、支部拡大戦術委員会、又は支部闘争委員会等を通じて傘下各分会に伝達し、さらに、昭和四六年七月七日ごろから一五日にかけて、それぞれの支部において、七月一五日の争議行為への参加を呼びかける記事を登載した支部機関紙等を発行し、分会等を通じて職員に配付することにより、職員に七月一五日の争議行為に参加するよう働きかけるなどの行為を経て、昭和四六年七月一五日当日、別表中「原告が当日自ら指導、関与した集会の実施状況」欄に記載のとおり各勤務時間内職場集会を他の支部役員らとともに実施し、かつ、当該集会に関し、次に掲げる行為を行つた。

イ 原告高橋幸夫は、全開発本局支部の当該集会において、争議行為に至る経過の報告、決議文の読み上げ・提案及び閉会宣言を行つた。

ロ 原告柴田利作は、全開発函館支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶及び団結がんばろうの音頭取りを行つた。

ハ 原告岩谷正信は、全開発函館支部の当該集会において、開会宣言、争議行為に至る経過の報告、激励電文の読み上げ、決議文の読み上げ・提案、団結がんばろうの司会及び閉会宣言を行つた。

ニ 原告奈良俊夫は、全開発函館支部の当該集会を実施させるための前同様の監視を玄関ホール附近で行つた。

ホ 原告藤原伸之は、全開発室蘭支部の当該集会において、開会挨拶、争議行為に至る経過の報告、決議文の採択及び団結がんばろうの司会並びに閉会宣言を行つた。

ヘ 原告上野吉之は、全開発室蘭支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、決議文の読み上げ及び団結がんばろうの音頭取りを行つた。

ト 原告朝倉定安は、全開発旭川支部の当該集会において、争議行為に至る経過の報告を行つた。

チ 原告加藤亀義は、全開発旭川支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、激励電文の読み上げ、決議文の提案・採択の司会、団結がんばろうの音頭取り及び閉会宣言を行つた。

リ 原告小田原英晴は、全開発留萠支部の当該集会において、争議行為に至る経過の報告及び決議文の読み上げを行つた。

ヌ 原告西村一昭は、全開発留萠支部幌延分会の当該集会において、争議行為に至る経過の報告、決議文の読み上げ・提案及び閉会挨拶を行つた。

ル 原告宮下義雄は、全開発留萠支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶を行つた。

ヲ 原告柏木正博は、全開発稚内支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶を行つた。

ワ 原告村元勝利は、全開発稚内支部の当該集会において、争議行為に至る経過報告及び決議文の読み上げを行つた。

カ 原告金沢実は、全開発稚内支部浜頓別出張所分会の当該集会において、争議行為に至る経過の報告を行つた。

ヨ 原告菊地広海は、全開発網走支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶及び団結がんばろうの音頭取りを行つた。

タ 原告日向寺正夫は、全開発網走支部の当該集会を実施させるための前同様の監視を庁舎玄関附近及び集会場入口附近で行つた。

レ 原告吉田勇治は、全開発帯広支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、閉会挨拶、団結がんばろうの音頭取り及び閉会宣言を行つた。

ソ 原告湊昇は、全開発帯広支部の当該集会において、開会の挨拶及び議事の進行を行つた。

ツ 原告加藤昌明は、全開発帯広支部の当該集会において、争議行為に至る経過の報告、激励電文の読み上げ及び決議文の読み上げ・提案を行つた。

ネ 原告関塚良雄は、全開発釧路支部の当該集会において、開会の挨拶、社会党釧路総支部役員及び釧路地区労働組合協議会役員の紹介、激励電文の読み上げ、当局に対する決意を述べる演説並びに決議文の提案をして議事の進行を行つた。

ナ 原告金野雄二郎は、全開発釧路支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、閉会の挨拶及び団結がんばろうの音頭取りを行つた。

ラ 原告豊田脩は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会において、集会をもり上げるため、団結がんばろうの音頭取りを行つた。

ム 原告西田亥三男は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会において、争議行為に至る経過の報告を行つた。

ウ 原告葛巻祥一は、全開発土試支部の当該集会において、集会スローガン及び決議文の読み上げを行つた。

ヰ 原告野地正保は、全開発土試支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶及び団結がんばろうの音頭取りを行つた。

ノ 原告松田和雄は、全開発土試支部の当該集会において、開会の挨拶および議事の進行を行つた。

オ 原告浅見和寿は、全開発建機支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、賃金要求内容の説明、勤務届表の記入方法の指示、団結がんばろうの音頭取り及び閉会宣言を行つた。

ク 原告村元真治は、全開発建機支部江別工場分会の当該集会において、開会宣言、議長選出の司会、集会をもり上げる挨拶、勤務届表の記入方法の指示及び閉会宣言を行つた。

ヤ 原告乗松賢治は、全開発建機支部の当該集会において、議長挨拶および議事の進行を行つた。

マ 原告渡部政司は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、原告西田亥三男が行つた争議行為に至る経過の報告の補足、勤務届表の記入方法の指示及び議事の進行を行つた。

ケ 原告浅野昇造は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会において、決議文の読み上げ提案を行つた。

フ 原告梶田好彰は、全開発網走支部の当該集会において、争議行為に至る経過の報告及び激励電文の読み上げを行つた。

(2) その結果、別表中「当該部局における集会実施状況」欄に記載のとおり、それぞれの部局において、本件勤務時間内職場集会が実施されるに至つたものである。

(三) 原告二本柳幹雄は、別表中「当時の組合役員」欄に記載のとおり本部役員の地位にあつたところ、昭和四六年七月一五日当日、別表中「原告が当日自ら指導、関与した集会の実施状況」欄に記載のとおり、全開発札建支部および石狩川支部合同の当該集会を当該支部の役員らをして実施させ、かつ、そのための前同様の監視を庁舎玄関前附近で行つた。

3 本件各懲戒処分の理由

(一) 前記1および2のとおり本件勤務時間内職場集会は、被告らの数回にわたる事前の警告及び当日の解散通告又は就業命令を無視して敢えて実施され、多数の職員がこれに参加してその職務を放棄したものであるから、業務の正常な運営を阻害するものとして、国公法九八条二項の規定により禁止された争議行為に該当するものであることが明白である。

(二) よつて、前記2記載の各原告の行為は、原告佐藤茂夫、同相原敬用、同直田政二、同二川原一夫、同綿谷勝治、同渡辺孝士、同高橋幸夫、同岩谷正信、同藤原伸之、同朝倉定安、同小田原英晴、同村元勝利、同加藤昌明、同関塚良雄、同西田亥三男、同葛巻祥一、同村元真治、同浅野昇造及び同梶田好彰、並びに西村一昭の各行為は、国公法九八条二項後段の規定に該当し、原告柴田利作、同奈良俊夫、同上野吉之、同加藤亀義、同宮下義雄、同柏木正博、同金沢実、同菊地広海、同日向寺正夫、同吉田勇治、同湊昇、同金野雄二郎、同豊田脩、同野地正保、同松田和雄、同浅見和寿、同乗松賢治、同渡部政司及び同二本柳幹雄の各行為は、国公法九八条二項前段、後段のいずれにも該当し、

(1) 当時職員として職務に専念する義務を免除されていた原告佐藤茂夫、同相原敬用、同直田政二、同二川原一夫、同綿谷勝治、同渡辺孝士、同高橋幸夫、同岩谷正信、同藤原伸之、同朝倉定安、同小田原英晴、同村元勝利、同加藤昌明、同関塚良雄、同西田亥三男、同葛巻祥一、同村元真治、同浅野昇造及び同梶田好彰並びに同西村一昭は国公法八二条一号に該当し、

(2) 当時職員として職務に専念する義務を有する原告柴田利作、同奈良俊夫、同上野吉之、同加藤亀義、同宮下義雄、同柏木正博、同金沢実、同菊地広海、同日向寺正夫、同吉田勇治、同湊昇、同金野雄二郎、同豊田脩、同野地正保、同松田和雄、同浅見和寿、同乗松賢治、同渡部政司及び同二本柳幹雄は、国公法八二条一号及び二号に該当するので、

被告らは、各原告の行為の内容、職員団体における地位、各本件勤務時間内職場集会の規模などを総合勘案し、各原告を別表中「処分の種類および程度」欄に記載のとおりそれぞれ処分したもので、この処分は適法かつ妥当なものである。

4 いわゆる出勤簿整理時間の性格について

(一) 本件勤務時間内職場集会が行われた午前八時三〇分から午前九時までの時間帯は、出勤簿整理時間と呼ばれ、この時間内に出勤して出勤簿に押印した者は勤務開始時間までに出勤したものとして取扱うことが事実上行われており、昭和四六年七月当時もこの取扱いが行われていたことは原告ら主張のとおりである。(但し、全部の職場において、このことが行われていたわけではない。)

(二) 原告らはこのことをもつて、北海道開発局における勤務時間は午前九時からとされていたかの如く主張するが、この主張は次に述べる理由により失当というほかない。

1 昭和四六年七月当時の北海道開発局職員の勤務時間については、政府職員の勤務時間に関する総理府令(昭和二四年一月一日、総理庁令第一号として公布されたが総理府設置法付則により総理府令となる)第一項が「政府職員の勤務時間は休日を除き次のとおりとし、日曜日は勤務を要しない日とする。

月曜日から金曜日まで

午前八時三〇分から午後五時まで。但し、その間に三〇分の休憩時間を置く。

土曜日

午前八時三〇分から午後零時三〇分まで。」と規定しており、船員等特別の勤務に従事する職員を除き、勤務開始時間が午前八時三〇分であつたことは明らかである。

2 出勤簿整理時間は、北海道開発局設置当時の住宅事情、交通事情等を考慮して行われてきたものであるとともに、その後のこうした事情の変化にも拘らず今日まで行われているものであるが、このような取扱いは1に述べた如く事実上のものであつて、勤務時間の変更のような法規上の根拠を有するものではない。

3 すなわち、出勤簿整理時間は、単に職員がその時間内に出勤して出勤簿に押印すれば、その者を勤務開始時間に出勤したものとして取扱い遅刻とはしないという消極的効果を付与するにすぎず、勤務時間自体を変更したり、当該時間内の勤務義務を免除したりするものではない。

4 従つて、当該時間内といえども北海道開発局当局の支配管理下にある勤務時間であることには何ら変わりがないのであるから、本件勤務時間内職場集会の如く多数の職員が職員団体の意思に従い、当局の管理を排して集団的に職務を放棄することは、国公法九八条二項に違反するものである。(なお、全司法警職法事件判決・東京地裁昭和四三年(行ウ)第四五号、昭和五一年一〇月二五日判決参照)

三  (本件懲戒処分の違法事由の主張に対して)

1 請求原因五1の主張は争う。

国家公務員の争議行為及びそのあおり行為等を禁止する国公法の規定が憲法二八条に違反するものでなく、また国家公務員の行う争議行為に同法によつて禁止されるものとそうでないものとの区別を認めるべきでないこと、さらに右規定に違反し、違法とされる争議行為に違法性の強いものと弱いものとの区別を設け、右規定違反として同法八二条により懲戒処分をすることができるのはそのうち違法性の強い争議行為に限るものと解すべきでないことは、最高裁の判例(いわゆる全農林警職法判決・最高裁大法廷昭和四八年四月二五日判決刑集二七巻四号五四七頁)とするところであり、原告らの主張は失当である。

2 同五2の主張は争う。

国家行政機関は、国権の一作用たる行政の主体として、国家公共事務を遂行すべく設置されたもので、その義務の公共性については、その設置目的からしておのずと明らかである。そして、国家行政機関の所掌する業務は、当該行政機関の内部組織を通じて、すべて組織的系統的にそこに勤務する職員が分掌し、かく運営されているわけであるから、当該行政機関が統一体として十分な組織機能を発揮し、その行政目的としての公益の実現を達成するためには、職員相互が密接な連携を図りつつ、ふだんにそれぞれの職責を果たすことが必要不可欠である。かくして国家公務員の職務の公共性は、個々の職員の個別的担当職務ではなく、個々の職員が一体となつて従事している国の業務の全体的公共性―業務の目的ないしそれが国民生活に果たす役割―として把握すべきものであつて、原告らの、業務の目的や役割を離れて業務を個別的部分的にとらえ、あるいは業務の実施方法からその公共性の強弱を論じるがごとき主張は、ものごとの本質を看過した全く当を得ない議論である。原告らの主張する北海道開発局の執行する事業に対する把握は、これらの事業が、国策として樹立された北海道開発計画に基づき北海道開発のために実施されている点の認識に欠け、はなはだ妥当を欠くものである。前記全農林警職法判決が、「公務員は、公共の利益のために勤務するものであり、公務の円滑な運営のためには、その担当する職務内容の別なく、それぞれの職場において、その職責を果たすことが必要不可欠であつて、公務員が争議行為に及ぶことは、その地位の特殊性及び職務の公共性と相容れないばかりでなく、多かれ少なかれ、公務の停廃をもたらし、その停廃は勤労者を含めた国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼすか、又はその虞れがあるからである。」と判示していることも、これらのことをまさに端的に言い表わしたものということができる。しかも北海道開発事業は、戦前戦後を通じてわが国経済社会の発展に、積極的な役割を果たしてきたものであり、国民生活全体の利益と密接な関連を有し、きわめて公共性の高いことは明らかである。従つて、その業務の停廃は、国民生活全体の利益を害し、国民生活に重大な影響をもたらすものといえる。原告らの主張はいずれの点においても失当である。

3 同五3の主張は争う。

4 同五4の主張は争う。

国家公務員について懲戒事由がある場合に懲戒処分を行うかどうか、行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任せられており、右裁量権の行使としてなした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合でない限り違法とならないことは、いわゆる全税関神戸税関事件判決(最高裁昭和五二年一二月二〇日判決民集三一巻七号一一〇一頁)等が判示するとおりである。本件集会は、公共性を有する行政機関である北海道開発局の一部の職場にとどまらず、ほとんどの職場において行われ、極めて多数の職員が職場を離脱して参加したものであり、しかもそれが当局の再三にわたる警告を無視して強行されたことは軽視し得ないものである。また、本件集会は、公務員に対する賃上げの具体的回答を政府に対して求めるためと称して行われたものであり、北海道開発局長に何ら権限のない事項にかかるものであることも明白である。原告らは右集会において指導的言動を行つたものであるから、このような事情を勘案して行つた本件懲戒処分は、およそ裁量権を逸脱したものとはなりえない妥当なものである。

第三証拠〈省略〉

理由

一  請求原因一及び三の事実並びに同二の事実の内、原告らの要求内容を除く部分は、当事者間に争いがない。

二  懲戒処分の理由たる事実の存否

1  被告らの主張する本件集会に至る経緯の内、前文及び(一)ないし(三)については、本件集会が勤務時間内に行われたとの点を除き当事者間に争いがない。また、同(四)、(五)については、全開発の七一年賃金要求に対して被告北海道開発局長が当該要求にかかる交渉に応じてその要望を聞いたこと、北海道開発庁が全開発からその要望を直接聞いたこと、全開発が昭和四六年七月一五日北海道開発局本局をはじめ、管下の一三地方部局中一二の地方部局において二九分間の職場集会を行つたことは当事者間に争いがない。

2  本件集会に関する原告らの行為については、次の各事実が当事者間に争いがない。

(一)  原告らが、本件集会当時別表中「組合役員」欄に記載のとおり本部又は支部の役員の地位にあつたこと

(二)  本件集会に関し、次に掲げる原告らの行為のあつたこと

(1) 原告相原敬用は、全開発本局支部の当該集会において、集会に参加した職員を激励する挨拶を行つた。

(2) 原告高橋幸夫は、全開発本局支部の当該集会において、争議行為に至る経過の報告、決議文の読み上げ・提案及び閉会宣言を行つた。

(3) 原告柴田利作は、全開発函館支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶及び団結がんばろうの音頭取りを行つた。

(4) 原告岩谷正信は、全開発函館支部の当該集会において、開会宣言、争議行為に至る経過の報告、激励電文の読み上げ、決議文の読み上げ・提案、団結がんばろうの司会及び閉会宣言を行つた。

(5) 原告奈良俊夫は、全開発函館支部の当該集会を実施させるための被告ら主張のごとき監視を玄関ホール附近で行つた。

(6) 原告藤原伸之は、全開発室蘭支部の当該集会において、開会挨拶、争議行為に至る経過の報告、団結がんばろうの司会及び閉会宣言を行つた。

(7) 原告上野吉之は、全開発室蘭支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、決議文の読み上げ及び団結がんばろうの音頭取りを行つた。

(8) 原告朝倉定安は、全開発旭川支部の当該集会において、争議行為に至る経過の報告を行つた。

(9) 原告加藤亀義は、全開発旭川支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、決議文の提案・採択の司会、団結がんばろうの音頭取り及び閉会宣言を行つた。

(10) 原告小田原英晴は、全開発留萠支部の当該集会において、争議行為に至る経過の報告及び決議文の読み上げを行つた。

(11) 原告西村一昭は、全開発留萠支部幌延分会の当該集会において、争議行為に至る経過の報告、決議文の読み上げ・提案及び閉会挨拶を行つた。

(12) 原告宮下義雄は、全開発留萠支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶を行つた。

(13) 原告柏木正博は、全開発稚内支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶を行つた。

(14) 原告村元勝利は、全開発稚内支部の当該集会において、争議行為に至る経過報告及び決議文の読み上げを行つた。

(15) 原告金沢実は、全開発稚内支部浜頓別出張所分会の当該集会において、争議行為に至る経過の報告を行つた。

(16) 原告菊地広海は、全開発網走支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶及び団結がんばろうの音頭取りを行つた。

(17) 原告日向寺正夫は、全開発網走支部の当該集会を実施させるための前同様の監視を庁舎玄関附近及び集会場入口附近で行つた。

(18) 原告吉田勇治は、全開発帯広支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、閉会挨拶、団結がんばろうの音頭取り及び閉会宣言を行つた。

(19) 原告湊昇は、全開発帯広支部の当該集会において、開会の挨拶及び議事の進行を行つた。

(20) 原告加藤昌明は、全開発帯広支部の当該集会において、争議行為に至る経過の報告、激励電文の読み上げ及び決議文の読み上げ・提案を行つた。

(21) 原告関塚良雄は、全開発釧路支部の当該集会において、開会の挨拶、社会党釧路総支部役員及び釧路地区労働組合協議会役員の紹介、激励電文の読み上げ並びに当局に対する決意を述べる演説をして議事の進行を行つた。

(22) 原告金野雄二郎は、全開発釧路支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、閉会の挨拶及び団結がんばろうの音頭取りを行つた。

(23) 原告豊田脩は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会において、集会をもり上げるため、団結がんばろうの音頭取りを行つた。

(24) 原告西田亥三男は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会において、争議行為に至る経過の報告を行つた。

(25) 原告葛巻祥一は、全開発土試支部の当該集会において、集会スローガン及び決議文の読み上げ等を行つた。

(26) 原告野地正保は、全開発土試支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶及び団結がんばろうの音頭取りを行つた。

(27) 原告松田和雄は、全開発土試支部の当該集会において、開会の挨拶及び議事の進行を行つた。

(28) 原告浅見和寿は、全開発建機支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、賃金要求内容の説明、勤務届表の記入方法の指示、団結がんばろうの音頭取り及び閉会宣言を行つた。

(29) 原告村元真治は、全開発建機支部江別工場分会の当該集会において、開会宣言、議長選出の司会、集会をもり上げる挨拶、勤務届表の記入方法の指示及び閉会宣言を行つた。

(30) 原告乗松賢治は、全開発建機支部の当該集会において、議長挨拶及び議事の進行を行つた。

(31) 原告渡部政司は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、原告西田亥三男が行つた争議行為に至る経過の報告の補足、勤務届表の記入方法の指示及び議事の進行を行つた。

(32) 原告浅野昇造は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会において、決議文の読み上げ提案を行つた。

(33) 原告梶田好彰は、全開発網走支部の集会において、争議行為に至る経過の報告及び激励電文の読み上げを行つた。

3  前記争いがない事実のほか、成立に争いのない乙第五号証の一ないし七二、証人北村照夫の証言により成立を認める乙第六号証の三、証人葛巻鉄也の証言により成立を認める乙第七号証の三・六、証人山崎敬夫の証言により成立を認める乙第八号証の三・四、証人中村繁雄の証言により成立を認める乙第九号証の三、証人高瀬亮壽の証言により成立を認める乙第一〇号証の三、証人坪田茂昭の証言により成立を認める乙第一一号証の二、弁論の全趣旨により成立を認める乙第一二号証の三、証人坪田茂昭、同北村照夫、同葛巻鉄也、同山崎敬夫、同中村繁雄、同高瀬亮壽、同中田與一郎、同滝川喜三、同尾崎定治、同大西弘之、同市川司郎、同梅野忠人、同藤原義夫の各証言、原告柏木正博、同吉田勇治、同浅見和寿、同西田亥三男、同日向寺正夫、同高橋幸夫、同西村一昭、同相原敬用各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一)  原告佐藤茂夫、同相原敬用、同直田政二、同二川原一夫、同綿谷勝治及び同渡辺孝士は、全開発本部役員として次の行為を行つた。

(1) 昭和四六年五月三〇日、第四三回中央委員会を開催し、同委員会に、「政府に対して公務員労働者に対する賃上げの具体的回答を求めるため、七月中旬に行われる公務員共闘統一行動に参加する。実力行使の具体的な内容は、早朝一時間、時間内に食い込む職場大会とする。実力行使に先立ち批准投票を実施する。批准は、組合員の六〇パーセント以上の賛成を必要とする。実力行使の細部については、拡大戦術委員会の検討を経て、中央執行委員長が指令するものとする。」旨の賃金闘争方針を提案した。その結果、右方針は原案どおり可決された。

(2) 昭和四六年六月一〇日、「大幅賃上げをめざし、一票投票に結集を」との見出しで「さあ!職場でみんながたたかう賃金闘争にするために、ともにガンバろう」旨の記事を登載した機関紙を発行し、各支部を通じて職員に配付することにより、職員に批准投票を行うよう働きかけた。

(3) 昭和四六年七月六日、第四三回中央委員会において決定した賃金闘争方針に基づいて、拡大戦術委員会を開催し、中央の賃闘情勢、批准投票の結果に対する分析を行うとともに、七月一五日の争議行為の内容を「早朝時間内二九分の職場大会」とすることを確認し、同年七月七日ごろこの旨を各支部に指令した。

(4) 昭和四六年七月一三日から一五日にかけて、「政府は交渉拒否、賃上げを抑える政府、人事院、七月一五日のストで要求を前進させよう」、「組合員の皆さん、七・一五の実力行使にはみんな揃つて参加しましよう!」と登載したビラを、各支部を通じて職員に配付することにより、職員に七月一五日の争議行為に参加するよう働きかけた。

(5) 昭和四六年七月一五日当日、全開発各支部等における各勤務時間内本件集会を各支部の役員らをして実施させ、さらに、本件集会に関して、次の行為を行つた。

イ 原告佐藤茂夫は、全開発本局支部の当該集会を実施させるため、職員が集会に参加するようあるいは集会に参加した職員が集会から離脱しないよう、また集会に対する当局側の措置を見張るための監視を庁舎内で行つた。

ロ 原告直田政二は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会を実施させるため、庁舎玄関前附近で、職員に対し集会へ参加するよう呼びかけを行い、また、当該集会を実施させるための前同様の監視を行つた。

ハ 原告二川原一夫は、全開発建機支部の当該集会を実施させるための前同様の監視を庁舎玄関附近及び集会場で行つた。

ニ 原告綿谷勝治は、全開発本局支部の当該集会を実施させるための前同様の監視を庁舎内で行つた。

ホ 原告渡辺孝士は、全開発土試支部の当該集会を実施させるための前同様の監視を第一庁舎裏口玄関附近及び集会場で行つた。

ヘ 原告二本柳幹雄は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会を当該支部の役員らをして実施させ、かつ、そのための前同様の監視を庁舎玄関前附近で行つた。

(二)  別表原告の氏名欄高橋幸夫ないし浅野昇造の三〇名の各原告は、全開発各支部役員として昭和四六年六月二二日ごろ、それぞれの支部において、「闘争の山場では、時間内一時間の実力行使を実施すること」について職員の賛否を問う争議行為のための批准投票を行い、また、昭和四六年七月七日以降、それぞれの支部において、前記全開発拡大戦術委員会の確認を経て発せられた全開発本部の指令を分会執行委員長会議、分会長会議、分会長・班長会議、分会代表者会議、支部拡大戦術会議、分会代表者班長会議、支部拡大戦術委員会又は支部闘争委員会等を通じて傘下各分会に伝達し、さらに、昭和四六年七月七日ごろから一五日にかけて、それぞれの支部において、七月一五日の本件集会への参加を呼びかける記事を登載した支部機関紙等を発行し、分会等を通じて職員に配付することにより、職員に七月一五日の本件集会に参加するよう働きかけるなどの行為を経て、昭和四六年七月一五日当日、別表中「原告が当日自ら指導、関与した集会の実施状況」欄に記載のとおり各勤務時間内職場集会を他の支部役員らとともに実施し、かつ、当該集会に関し、次に掲げる行為を行つた。

(1) 原告藤原伸之は、前記の行為のほか、決議文の採択を行つた。

(2) 原告加藤亀義は、前記の行為のほか、激励電文の読み上げを行つた。

(3) 原告関塚良雄は、前記の行為のほか、決議文の提案を行つた。

(三)  原告らの前記各行為により、昭和四六年七月一五日北海道開発局本局をはじめ管下の一三地方部局中一二の地方部局及び大半の出先機関において、ほぼ別表「原告が当日自ら指導関与した集会の実施状況」及び「当該部局における集会の実施状況」欄記載のとおりの場所、時間、参加職員数をもつて本件集会が一斉に行われ、これに管理職等を除く当日の在庁職員約八五〇〇名中少くとも七七パーセントに及ぶ約六六〇〇名の職員が参加してその職務を放棄した。

(四)  なお、本件集会は、同集会当日の被告らの解散通告、就業命令を無視して敢行された。

以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

4  次に本件集会が勤務時間内に行われたものかどうかを検討する。

(一)  全開発が昭和四六年七月一五日に行つた本件集会が、同日午前八時三〇分以降午前八時五九分までの間に行われたことは当事者間に争いがない。

(二)  昭和四六年七月一五日当時の北海道開発局職員の勤務時間については、政府職員の勤務時間に関する総理府令(昭和二四年一月一日総理庁令第一号)第一項が「政府職員の勤務時間は、休日を除き次の通りとし、日曜日は勤務を要しない日とする。月曜日から金曜日まで 午前八時三十分から午後五時まで。但し、その間に三十分の休憩時間を置く。土曜日 午前八時三十分から午後零時三十分まで。」、同令第二項が「通勤のため利用する交通機関が著しく混雑する地域に所在する官庁に勤務する政府職員の勤務時間は、主務大臣が内閣総理大臣の承認を得て別に定めることができる。」、同令第三項が「現業その他の特別の勤務に従事する政府職員の勤務時間は、主務大臣が別に定めることができる。」と規定し、同令第三項の規定に基づき北海道開発局において特別の勤務に従事する職員の勤務時間の特例に関する総理府令(昭和三十七年九月二十八日総理府令第五十三号)第一項が「北海道開発局において、現業その他特別の勤務に従事する職員の勤務時間については、北海道開発庁長官が定める。」と規定し、北海道開発局に勤務する船員の勤務時間について(昭和三十四年一月三十一日人事院指令一五―一)が第一項で「人事院は、一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)第十四条第二項の規定に基き、北海道開発局に勤務する海事職俸給表(二)の適用を受ける職員の勤務時間を一週間について四十八時間とすることを承認する。」第二項で「前項の勤務時間の割振については、北海道開発庁長官の定めるところによる。」と規定しており、現業その他特別の勤務に従事する職員ないし船員の勤務時間についての北海道開発庁長官の定めがない限り昭和四六年七月一五日当時の北海道開発局職員の勤務開始時間は、右により午前八時三〇分であつたことが明らかである。

(三)  ところで、本件集会当時、北海道開発局の大部分の職場において午前八時三〇分から午前九時までの時間帯は出勤簿整理時間と呼ばれ、この時間内に出勤して出勤簿に押印した者は勤務開始時間までに出勤したものとして取扱うことが事実上行われていたことは当事者間に争いがない。そして、原本の存在及び成立に争いがない乙第四号証、証人坪田茂昭の証言により成立を認める乙第三号証の五、証人北村照夫の証言により成立を認める乙第一四号証の二、証人葛巻鉄也の証言により成立を認める乙第一五号証の二、証人高瀬亮壽の証言により成立を認める乙第一七号証の二、弁論の全趣旨により成立を認める乙第一八号証の一、証人坪田茂昭、同北村照夫、同葛巻鉄也、同山崎敬夫、同中村繁雄、同高瀬亮壽の各証言によれば、右取扱いは、昭和二六年北海道開発局設置当時から、交通事情等を理由に行われてきたものが、今日までそのまま運用されてきたものであること、昭和四六年七月一五日の出勤時間については、その前日北海道開発局各部局の管理者が、文書又は口頭で翌日は正規の勤務開始時間である午前八時三〇分までに出勤するよう当日に限り、出勤簿及び休暇等処理簿は使用しないで勤務届表を使用するよう指示したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

(四)  ところで、右出勤簿整理時間の取扱いは、それ自体法令で定められた勤務開始時間を変更するものではなく、単に職員がその時間内に出勤して出勤簿に押印すれば、その者を勤務開始時間までに出勤したものとして取り扱い遅刻とはしないという消極的な効果が付与されているにすぎない。従つて、職員は、出勤簿整理時間を他の目的のために自由に利用しうるものではなく、この時間内に出勤した職員は直ちにその職務に従事する義務があるのであり、北海道開発局当局もその者に対し、その職務に従事することを命じうるのである。更に、当局はその職員に対し午前八時三〇分までに出勤するよう指示することもできるものである(現に、これまでにも、そのような指示がなされたことはあつた)。そうすると、北海道開発局職員が、当局の許可なくかつ当局の午前八時三〇分に出勤するようにとの指示にもかかわらず、午前八時三〇分以後に職場集会を開催しこれに参加することは、勤務時間内の行為として、国公法九八条二項等に違反することになりうるといわざるをえない。

三  国家公務員法の適用

以上の認定事実及び判示によれば、全開発各支部が昭和四六年七月一五日に行つた本件集会は、公務員共闘の統一行動の一環として、全開発中央本部の指導の下に、賃金要求貫徹を目的とし、当局の数回にわたる事前の警告、当日の解散するようにとの通告、就業命令等を無視して勤務時間中に二九分間以内で行われ、多数の職員がこれに参加して職場を放棄したものであり、業務の正常な運営を阻害するものであるから国公法九八条二項前段によつて禁止された争議行為に該当し、原告らの前記認定行為は、次のとおり同法八二条所定の懲戒事由に該当するものと解することができる。

1  原告佐藤茂夫、同相原敬用、同直田政二、同二川原一夫、同綿谷勝治及び同渡辺孝士は、いずれも全開発本部役員かつ組合専従者(この点は原告相原敬用本人尋問の結果及び弁論の全趣旨により認められる)として中央委員会において決定された本件集会実施の議案の提案に関与し、機関紙を発行することにより、職員に批准投票を行うよう働きかけ、拡大戦術委員会において早朝時間内二九分の職場集会の実施を確認し、各支部を通じて職員に右職場集会への参加を働きかけ、もつて本件集会を指導し、かつ本件集会を実施させるための監視をしたもので、原告らの右行為は、争議行為を企て又はその遂行を共謀し、かつ争議行為をなしたものとして、国公法九八条二項前後段に違反し、同法八二条一号に該当する。

2  原告高橋幸夫、同岩谷正信、同藤原伸之、同朝倉定安、同小田原英晴、同村元勝利、同加藤昌明、同関塚良雄、同西田亥三男、同葛巻祥一、同村元真治、同浅野昇造、同西村一昭及び同梶田好彰は、いずれも全開発支部役員かつ組合専従者又は職務専念義務のない者(この点は原告西田亥三男、同高橋幸夫各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨により認められる)として、全開発各支部において本件集会を実施し、右集会の進行に関与したもので、同原告らの各行為は争議行為をなしたものとして少くとも国公法九八条二項前段に違反し、同法八二条一号に該当する。

3  原告柴田利作、同奈良俊夫、同上野吉之、同加藤亀義、同宮下義雄、同柏木正博、同金沢実、同菊地広海、同日向寺正夫、同吉田勇治、同湊昇、同金野雄二郎、同豊田脩、同野地正保、同松田和雄、同浅見和寿、同乗松賢治、同渡辺政司及び同二本柳幹雄は、いずれも全開発支部役員(但し、原告二本柳幹雄は全開発本部役員)として全開発各支部において本件集会を実施し、右集会の進行に関与したもので、同原告らの各行為は争議行為をなしたものとして少くとも国公法九八条二項前段に違反し、いずれも当時職員として職務に専念する義務を有していたから、同法八二条一及び二号に該当する。

四  国家公務員法九八条二項の合憲性等

1  原告らは、公務員の職務の性質、内容はきわめて多種多様であり、公共性のきわめて強いものから、私企業のそれとほとんど変わるところのないものまであるのであつて、そのような公務員の職務の多様性と公共性の強弱とを顧慮することなく、その公共性を理由に全ての国家公務員の一切の争議行為を一律に禁止している国公法九八条二項は、公務員の労働基本権を保障した憲法二八条の趣旨に反し、必要やむを得ない限度をこえて争議行為を禁止したものとして、違憲の規定といわざるを得ないと主張する。

そこで考えるに、国家公務員も勤労者であるから、憲法二八条の保障は原則的には国家公務員に対しても及ぶものと解すべきであるが、しかし、国家公務員については、その従事する職務に公共性がある一方、法律によりその主要な勤務条件が定められ、身分も保障されているほか、適切な代償措置が講じられているのであるから、国公法九八条二項がこのような国家公務員についてその争議行為及びそのあおり行為等を禁止しても、それは、勤労者をも含めた国民全体の共同の利益の見地からするやむを得ない制約であり、憲法の右規定に違反するものではないと解するのが相当である。(最高裁大法廷昭和四八年四月二五日判決刑集二七巻四号五四七頁参照)

2  次に原告らは、国公法はその争議行為によつて国民生活全体の利益を直接害し、国民生活に重大な支障をもたらすおそれのある争議行為だけが禁止されていると解釈すべきであり、北海道開発局の業務内容及び本件集会の態様から、本件集会は国公法九八条二項の争議行為に該当しないと主張する。

しかしながら、国公法九八条二項の立法趣旨に照らすと、同規定は国家公務員の争議行為を区別したうえ、原告らの主張するような特定の争議行為のみを禁止し、その余の争議行為を禁止していないと解するのは相当でない(前記昭和四八年四月二五日大法廷判決及び最高裁第三小法廷昭和五二年一二月二〇日判決民集三一巻七号一一〇一頁参照)から原告らの主張はそもそもその前提を欠き失当である。

3  さらに原告らは、仮に本件争議行為が国公法九八条二項により禁止されたものであるとしても、争議行為という団体的性格の行為に対し、個別的労働関係における服務規律違反に対する制裁ともいうべき懲戒処分を課することはできないし、同条三項は、公労法一八条との対比からいつて、争議行為禁止違反の効果として解雇を予定しているだけであつて懲戒処分を予定しているものとは解されないから、本件争議行為に対し懲戒処分をもつてのぞむことは違法であると主張する。

しかしながら、公労法一八条については、公労法一七条一項違反の争議行為に対しても国公法八二条の規定による懲戒処分の対象とされることは免れないと解される(最高裁第三小法廷昭和五三年七月一八日判決民集三二巻五号一〇三〇頁参照)から、公労法一八条との対比は理由にならないし、また、労働者の争議行為は集団的行動であるが、その集団性のゆえに、参加者個人の行為としての面が当然に失われるものではないから、違法な争議行為に参加して服務上の規律に違反した者は懲戒処分を免れえないといわなければならない(前記昭和五三年七月一八日第三小法廷判決参照)。よつて原告らの主張は失当である。

五  懲戒権の濫用の主張について

裁判所が懲戒権者の裁量権の行使としてされた公務員に対する懲戒処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場に立つて、懲戒処分をすべきであつたかどうか又はいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と右処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、それが社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法と判断すべきものと解するのが相当である(最高裁昭和三二年五月一〇日第二小法廷判決民集一一巻五号六九九頁、前記昭和五二年一二月二〇日第三小法廷判決参照)。

そこで各原告について右裁量権濫用の有無を検討する。

1  原告佐藤茂夫、同相原敬用について

(一)  右原告らは、いずれも停職一月の懲戒処分を受けているものであるが、前記認定のとおり右原告らは、全開発中央執行委員長及び同書記長として争議行為である本件集会の実行を共謀して職員に右集会への参加を働きかけたものである。

(二)  原告らの行為のため、前記認定のとおり、本件集会当日北海道開発局の七七パーセント以上の職員が右集会に参加しその職務を放棄するに至つたもので、職場離脱の時間がそれほど長時間にわたるものではなく、また、そのため業務処理が遅れ具体的に問題が生じたことがなかつたとしても、右職場離脱が公共性を有する行政機関であり、かつ、出張所、事業所、工場等二三九もの現場機関を有する(この点は成立に争いない甲一号証、二号証の一、弁論の全趣旨により認められる)北海道開発局の一部の職場だけでなく大半の職場で行われたこと、しかも、それが当局の数回にわたる事前の警告、当日の解散通告、就業命令を無視して敢行されたことも軽視できない。また、前出乙五号証の一、証人坪田茂昭の証言により成立を認める乙第三号証の一、二、原告相原敬用本人尋問の結果によれば、本件集会は人事院勧告の完全実施及び適正な勧告をなすべきことを交渉当事者ではない政府及び人事院に要求すべく行われたものであるうえ、政府はその前年の昭和四五年度より人事院勧告を完全実施しており、本件集会数日前の内閣官房長官談話、総理府総務長官談話中にも「政府は昨年度から人事院勧告の完全実施を行つているところであり、かつ、本年度の公務員の給与改定については、人事院において、現在鋭意検討が進められている段階である。」旨の文言があり、原告らにおいてもこれらの事情は十分認識していたことが認められ、他方、全開発の七一年賃金要求に対して被告北海道開発局長が当該要求にかかる交渉に応じてその要望を聞いたこと、北海道開発庁も全開発からその要望を聞いたことは前記のように当事者間に争いがなく、同被告においても全開発より聞いた要望を全開発の伝達方希望に従つて北海道開発庁に伝えたことは証人坪田茂昭の証言及び原告相原敬用本人尋問の結果により認められる。また、同原告本人尋問の結果によれば、全開発は公務員労働組合共闘会議を通じ、また、国家公務員労働組合賃金獲得連絡協議会に役員を派遣して政府及び人事院との交渉の機会を持つていたことも認められる。

(三)  また、前出乙第四号証及び成立に争いのない甲第四号証の二によれば、原告佐藤茂夫は、全開発中央執行委員長として本件と同種の勤務時間内職場集会を指導し、もつて争議行為を企て又はその遂行を共謀したとして昭和四四年一二月一九日付で四月間俸給の月額の一〇分の一減給処分に処せられたこと、原告相原敬用は、全開発書記長として本件と同種の勤務時間内職場集会を指導したとして、昭和四三年一二月一一日一月間俸給の月額一〇分の一減給処分に、昭和四四年一二月一九日付で三月間俸給の月額一〇分の一減給処分に処せられたことが認められる。

(四)  右のような右原告らの行為の性質、態様、地位等諸般の事情を考慮すると、停職一月という本件懲戒処分が社会観念上著しく妥当性を欠くものとまではいえず、他にこれを認めるに足る事情も見当らない以上、右処分が懲戒権者に委ねられた裁量権の範囲を越えこれを濫用したものということはできない。

2  原告直田政二、同二川原一夫、同綿谷勝治、同渡辺孝士について

右原告らは、いずれも一月ないし六月間俸給の月額の一〇分の一減給処分を受けているものであるが、前記認定のとおり、右原告らは、全開発本部役員として、本件集会の実行を共謀して職員に右集会への参加を働きかけたものである。そして、前記1(二)認定の事実を考慮し、更に前出甲四号証の二によれば、原告直田政治、同二川原一夫は、全開発中央執行委員及び会計長として昭和四四年一一月一三日本件同種の勤務時間内職場集会を企て、指導したとして同年一二月一九日付で一月間俸給の月額一〇分の一減給処分に処せられたことが認められるほか、右原告らの行為の性質、態様、地位等諸般の事情を考慮すると、一月ないし六月間俸給の月額の一〇分の一減給という本件各減給処分が社会観念上著しく妥当性を欠くものとまではいえず、他にこれを認めるに足る事情も見当らない以上、右処分が懲戒権者に委ねられた裁量権の範囲を越えこれを濫用したものということはできない。

3  原告高橋幸夫、同柴田利作、同岩谷正信、同奈良俊夫、同藤原伸之、同上野吉之、同朝倉定安、同加藤亀義、同小田原英晴、同西村一昭、同宮下義雄、同柏木正博、同村元勝利、同金沢実、同菊地広海、同日向寺正夫、同吉田勇治、同湊昇、同加藤昌明、同関塚良雄、同金野雄二郎、同豊田脩、同西田亥三男、同葛巻祥一、同野地正保、同松田和雄、同浅見和寿、、同村元真治、同乗松賢治、同渡部政司、同浅野昇造、同二本柳幹雄、同梶田好彰について

右原告らは、いずれも一ないし二月間俸給の月額の一〇分の一減給処分を受けたものであるが、前記認定のとおり、右原告らは全開発各支部役員として(但し、原告二本柳幹雄は全開発本部役員として)北海道開発局本局、各地方部局等及び各出先機関において本件集会を実施し、右集会の進行に関与したものである。そして前記1(二)認定の事実を考慮し、更に、前出甲第四号証の二、乙第四号証により認められるところの原告柏木正博は、かつて全開発副中央執行委員長として本件と同種の勤務時間内職場集会を指導したとして昭和四三年一二月一一日一月間及び昭和四四年一二月一九日三月間の各俸給の月額の一〇分の一減給処分に処せられたこと、原告金野雄二郎は、かつて全開発副執行委員長として本件と同種の勤務時間内職場集会を指導したとして昭和四三年一二月一一日一月間俸給の月額の一〇分の一減給処分に処せられたこと、原告岩谷政信、同柴田利作、同上野吉之、同浅見和寿、同葛巻祥一及び同西田亥三男はいずれも昭和四四年一二月一九日付で本件同種行為について一月間俸給の一〇分の一減給処分に処せられたこと及び原告吉田勇治本人尋問の結果により認められるところの同原告は争議行為により以前にも懲戒処分を受けていることのほか、右原告らの行為の性質、態様、地位等諸般の事情を考慮すると、一月ないし二月間俸給の月額の一〇分の一減給という本件減給処分が社会観念上著しく妥当性を欠くものとまではいえず、他にこれを認めるに足る事情も見当らない以上、右処分が懲戒権者に委ねられた裁量権の範囲を越えこれを濫用したものということはできない。

六  結論

以上によれば、被告らが原告らに対してした本件各懲戒処分はいずれも適法なものである。よつて原告らの請求は、理由がないからいずれもこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 古川正孝 島田充子 富田善範)

当事者目録、別表〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例